初めての舞台が『盗聴』でよかった

 幸運にも当日券を入手することができ、またありがたいことに席に恵まれ、とても近い距離かつ舞台全体を観ることができました。

 

 舞台開始早々、濵田さんが2段に分かれた舞台の上に現れ、その存在感に圧倒。

 濵田さんが動き出した瞬間に、「これは濵ちゃんであって濵ちゃんじゃない。榎木田さんだ。」と理解でき、不思議なことに苦手意識のあった『演技を観る』ということに苦痛を感じませんでした。そこからは、出演さえている皆様に圧倒され、あっという間に世界観に飲み込まれていました。

 一番大きな理由としては、生の演技ということで、客席全体のリアクションや雰囲気、空気感でいい意味で場酔いできたからだと思います。

 榎木田さんのどこか頼りないけど頼りになるところ、ちょっと抜けているところ、チャーミングなところ、なのに掴みどころがないところがすごく魅力的で、メタ的な話をすると濵田さんぽいキャラクターに一瞬で心を奪われました。

 あと例のポージング、観劇後に濵ちゃんが考えたと知りめちゃくちゃ愛おしいです。

 

 睦美ちゃんも加わって、3人体制になった有限会社 盗聴撲滅隊。

 全然関係ないんですが、有限会社っていうのがめちゃくちゃ好きです。榎木田さんが設立したのだとすると、少なくとも2006年には開業していたわけで。時間軸が現在と一致していると考えると、16年以上の歴史があるわけじゃないですか。その中で様々な依頼人にあって、人の裏側を見てきて、榎木田さんが構成されていっているって色々考えさせられます。結末知った後だとなおさらに。

 

 基本的にめっちゃコメディーなんですよ。一件一件の案件って、それだけ見ると結構重めなのに、演者さんたちがコミカルに仕立て上げているので、最後までコメディーなのかと思っていました。

 彼女にフラれやすいのもそれまでのキャラクター性から「チャーミングだなぁ」くらいのテンションで観ていたのに、まさかの伏線でビビりました。美人の依頼人さんが来てから、確かに榎木田さんの言動おかしかったけど、それまでの雰囲気から健吉くんと同じように「一目ぼれでもしたのかな」って感じていました。

 色々と端折りますが、榎木田さんが管理人さんとバトり始めて、さすが濵田さん体が軽いなー2人ともさすがだなーとかぼんやり観ていたのに、急にロープ出してきて、普通にビビって全く知らないお隣の席の方と目を合わせました。お互い「え?」ってなってましたね。

 そこからは本当に怒涛の展開で、正直まだ自分の中に落とし込めていない部分も多々あります。

 

 淡々とあんなにお互い信頼しきっていると思っていた社員2人に嘘をつく様子とか、全てがばれても動揺すら見せない様子とか、事実を最近あったエピソードの1つという漢字で悪びれる様子なく語る様子とか。そこまでいた『榎木田歩』は何者だったのか、未だに分かりません。人を2人殺していて、でもその殺人動機がまるで別人のようにも感じました。

 自分の彼女を殺したときは、過去のトラウマと親愛なる人の裏切りで感情のままに殺したのに、管理人さんを殺したときは淡々と証拠隠滅まで行っている。そんなに日にちが離れていないはずなのになんでそんなに違うんだろう。

 

 考察とか得意じゃないのであくまで自分の感想ですが、榎木田さんは、人は善いものだと思いたいし、他者を愛したい。けど、過去のできごとや仕事での経験からそのまま受け止められない。だから束縛するし、盗聴もしてしまう。そんな自分=悪だと捉えてしまい、善になれない自分と善ではない他者のギャップに苦しんでいたのではないかなって。少しずつ理想の自分と理想の世界が現実から乖離していたのかも。

 そして、善い人間ではない人に対しては好意的な感情はなくなってしまったのではないかと思います。殺人を犯した管理人さんと浮気をして自分を裏切った恋人に対しては、殺したとしても罪の意識はなかったのではないでしょうか。榎木田さんにとっては死んでもいい人間だったから。善人じゃなかったから。

 

 なので「嘘をついた責任」というのは、人を殺したことに対する罪の責任ではなく、信頼してくれていた2人を裏切ってしまった責任と自分が善い人間になれなかった責任なのではないかなと思っています。

 だから自首をするのではなく、自死を選んだ。自分が善い人になれなかったから。

 最後の場面まで濵田担大勝利だった歌の場面がまさかあんな重々しく、しんどいものになるとは思いませんでした。歌っている時の表情、色々な解釈があるとは思います。私は笑っているように見えました。やっと楽になれたのかな?そう考えるとある意味ハッピーエンドなのかもしれないって思っています。

 

 

 

 

 

 以下自分語りします。

 

 11月11日(金)18時に東京グローブ座で上演されている舞台『盗聴』を観劇してきました。大変申し訳ないのですが、これまでどんなに好きなタレントさんが出演していても観劇をしたことがありませんでした。

 

 理由としては、私が人の演技を観ることが得意ではないこと、地方に住んでいるので移動などを考えるとコスパが悪いと感じていたこと、平日に行われることが多いため敷居が高い、ということが主でした。

 ただ、本当にあまりよろしくないのですが、現在のジャニーズWESTの舞台ラッシュで、少しでもメンバーが観れるなら行きたいな!くらいなノリで、今年から申し込みをしていました。でも、先にも述べたように若干敷居が高いので、当日券にまでは手を出す気はありませんでした。

 なのになんで今回は当日券という手段で行ったのかというと、色々と自暴自棄になっていたからです。

 

 詳しいことは書きませんが、「このままだと精神やられるな」ということが立て続けに起き、元々精神面の病を持っていたこともあり、なんとなくやばいなという状態でした。なんとなくやばいというか、ODしたりなんかしてました

 ただ12月には神山くんの舞台もあったし、小瀧くんの舞台の当落待ちでもあるし、頑張らないと!と思ってはいたのですが、ちょっとずつ心が追いつかなくなっていました。

 

 そんな時、私が好きでTwitterをフォローさせていただいている方が「盗聴が最高だった」という旨のツイートをしていて、その方以外の皆様もそれに対し同意をしていたので「そんなに最高の舞台ならチャンスがあれば観てみたいな…」と思い始めました。

 そして11月10日にこれ以上は無理だなぁという状態になったので、「最後に盗聴だけ観てみたい」と思い、当日券チャレンジをしました。

 

 そうしたらなんと奇跡的に入手。

 ただ本当に無計画だったので、慌てて高速バスと新幹線の予約をし、11日の午前中に仕事をしてから向かうことにしました。職場が基本的に有給などは業務に支障がないなら当日申請というのも幸いでした。

 

 先述している通り私は舞台の観劇が初めてだったため、全くルールを知らないので、行きの高速バスの中で必死に検索し勉強をし、たどり着いたグローブ座。

 これが例の看板か!と大きな看板を撮影しながら、当日券の入場を待ちました。

 無事に入場が出来た後は、普段のコンサート会場との雰囲気の違いに一人で緊張していて、気が付いたら開演時間となっていました。

 

 

 観劇が終わった後も、終始余韻に浸っていました。3日経った今でも浸っています。

 

 

 相変わらず私の色々あった環境は何も変わっていないし(むしろ1日で悪化してる)、私の精神的な部分が治ったわけでもありませんが、少なくとも「舞台っていいな」と思えたことで、生きる気力を持つといったところまでは持ち直せています。

 ドラマとか小説だったらここで劇的な出会いがあって、人生が一遍!なんてことあるかもしれないけど、私は変わらず田舎の中小企業の事務員だし、世界は変わらないし、私も周りも変わることができません。

 

 それでも舞台演劇に感動したことで、12月の神山くんの舞台も絶対に観たいって思っているからそこまでは頑張れるし、小瀧くんの舞台が当たるかは分からないけど、今回みたいに当日券とかあれば観たいって思っているので千秋楽までは頑張れるし、そこまで頑張れば次のツアーとか発表されているかもしれないし、私の中の「そこまで頑張ろう」が伸びていくような気がしています。

 推しに会えたからっていうのも大きいと思いますが、ただただ舞台『盗聴』がおもしろくて、語彙力はないですが最高の舞台だったことで、私の生きるモチベーションになりました。

 

 ただ面白い舞台だったそこまで思わなかったのかもしれないです。奇しくも榎木田さんが私自身と重なると感じることが多々あり、とても感情移入できる舞台だったからこそ、面白さを知ることができたんだなと思います。

 まだ観劇が終わって数日なので、アドレナリンがでて頑張ろうって思えているだけかもしれません。それでも、私にとって舞台の面白さを教えてくれて、気力を与えてくれた『盗聴』に出会えてよかったです。